世の中には2次元のエロに関心のある方もおられます。古今東西 エロは芸術と文明進歩に欠かせぬもの、決して2次元エロ趣味を 愚弄するなかれ…。さて、エロ画でも多少高尚な「触手マニア」(笑) な方の中には、自らの趣味のルーツに葛飾北斎の名を挙げられる 方もいます。この触手マニアの北斎は、新藤兼人が緒形拳主演の 『北斎漫画』で映画化し、タコの描写が実に愉快です。 さてエロ画でも多少高尚な「残酷画マニア」(笑)の方には、現在の 会田誠の活躍を挙げ、残酷画のルーツに昔の挿絵画や月岡芳年、 伊藤春雨の作品を紹介される方もいます。そして残酷画の巨匠と して忘れてならないのが幕末・土佐の異端の変態絵師(誉め言葉) こと、絵師金蔵の芝居画の存在です。この映画はその絵師金蔵の 姿を描いた、中平康独立プロ成立後の入魂の第一作作品です。 さて土佐藩の御用絵師を目指す金蔵を演じるは、ロン毛が貴重な 麿赤児(笑)。己の書きたい絵の為には、近所の少女を裸にして 観察するわ(完璧に犯罪です)、友人の江守徹のコネで切腹を 近くで見物するわ(パーフェクトに変態です)、そんな振る舞いで 近所からもう「えんがちょ!」状態。だったら江戸で勉強させるべぇ、 てな具合にていよく留学させられます。が金蔵、勉強するでもなく 芝居三昧の日々を送るぐうたら振り。さらに江戸では残酷趣味で ゴスっ娘(これは嘘)の姫、加賀まり子に妙に気に入られてしまい、 彼女演出の実演残酷ショーまで見物できちゃう有様。 それでも江戸で勉強したのだからと御用絵師に出世するが、何を 描くでもない自由人状態。権威への抵抗などと口にはするが、 どうにも行動が伴わない。自らの出生に絡む事件や、贋作を描いた 事での失脚、それらに絡む周囲の人間の死を身近にし、野に 落ちぶれ始めて自らの内から湧き出る絵、芝居画を描く事となる… この物語は破天荒の天才のアナーキぶりを通して、製作当時の 革命気分を表した作品とも読み取れます。が、現在改めて見ると 「…いるよね、こんな頭デッカチなヲタクくん」(笑)。いえ誰かへの 中傷ではありません、私もその気が十分アリですから(無論金蔵の 才能・努力は無い、トホホ…)。そんな現代にこそ身近な男、金蔵が 堕ちる所まで堕ち、自らを見つめ抜いて初めて、理屈を捨てて己の 殻を破り開花する、正に「そんな悩めるあなた、誰かへの応援歌」 として見ても良いのではないでしょうか!! 映画の残酷描写は泥絵具っぽい、赤い血糊が基調で、リアルさより インパクト重視の作り(まあ当時のスプラッター描写の基本ですが)。 また金蔵の漁師の友人として、土方巽の出演も『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』マニアの私には嬉しい限り。暗黒舞踏な二人による、 例によって意味不明な舞踏のサービスショットも当然有ります(笑)。 なお映画の冒頭にて紹介されていますが、絵師金蔵の描いた 芝居絵は高知・赤岡に有り、現在も祭りの日に街中に並べられます。 また泥絵具で描かれた芝居絵(看板絵)、といえば後に映画館を 飾った看板のルーツとして見る事もできます。興味をもった方には 是非この金蔵の作品をご覧になる事をお勧めします。 残酷度 ★★★ 暗闇舞踏度 ★★★ 悩める芸術家度 ★★★★ 悩めるヲタク度 ★★★★★ 1971年 中平プロ(配給・東宝) 監督 中平康 脚本 新藤兼人 原作 榎本滋民 音楽 黛敏郎 出演 麿赤児 稲野和子 扇ひろ子 岡田英次 加賀まり子 土方巽 l 2008年9月4日 シネマヴェーラ渋谷にて鑑賞
(併映 『実録外伝ゾンビ極道』) |