『ダークナイト』は素晴らしい映画である。どう素晴らしいかは 多くの方が書いておられるので、それに私が付け加える事も ありますまい。 ところでこれを書いている現在、『ダークナイト』の全米興収は 5億ドルを突破、歴代2位(1位は『タイタニック』)となったそうで ある。ド派手なアメコミ映画とはいえ上映時間は長い、ジェット コースタームービーに納まらぬ重厚な作り、そしてあの荒んだ 物語…そんな映画がここまで入るとは!むろん故ヒース・ レジャーの影響は大だろうが、映画的に作られた作品を大人 が楽しむ、というスタイルがまだまだ健在な米の映画文化を 羨ましく思ったりします。日本で大ヒットする映画は、テレビの 延長であったり、「ぽ~にょ ぽにょ♪」などと、ファミリー向けで あったりしなければならないのですから。 ところで『ダークナイト』には、ジョーカーの影にかくれてトゥー・ フェイス(『学校の怪談』の人体模型のリアル版だ!)も出て おります。彼のキメ技(?)はコイントスですが、最近もう一人、 コイントスが売りの怖~い人がいましたね。そう『ノーカントリー』 のおかっぱ頭の殺人マシーン、シガーです。演ずるはハビエル・ バルデムでした。 私は西洋文化に詳しくはありませんが、コイントスという行為 が少し気になりました。一人がAかBか決めるならコイントスも 有りだが、二者(以上)が選ぶ行為もあちらはコイントスで決定、 でもこの場合、日本なら普通ジャンケンでしょ? ジャンケンは(結果は偶然だが)自分が判断した手を出すので、 「人事を尽くして天命を待つ」行為であり、結果に「引き分け」も ある行為だが、コイントスは判断を偶然=神に委ね、二択の 冷徹な結果を受け入れる。コイントスは「迷ったら神さんに決め てもらう、それで文句なし!」という行為と言えるのでしょう。 トゥー・フェイスはあんな目に遭ってブチ切れた結果、自分で 悩む事を止め、ジャッジはコイントスに委ねる事で、迷う事なく 暴走できる「怪人」となりました。シガーもコイントスを行う事で、 彼の殺人はまさに「荒ぶる神」の行為となり、人の手によって 阻止できない存在になりました。 『ノーカントリー』で無敵であったシガーですが、最後にジョシュ・ ブローリンの嫁を殺しに行きます。が、そこで嫁にコイントスを 拒否されてしまいます。それでも嫁は始末したのでしょうが… 直後「荒ぶる神」であったシガーは、コイントスを否定された事で 神通力を失ったのか、無様に事故る。その様は死んだジョシュ・ ブローリンの様…今まで無敵であったシガーは、もはやジョシュ・ ブローリン同様「出来るけどタダの人」となり、いずれは滅ぶ存在 になり下がった、と私は解釈しています。 なんて講釈してみたのですが、案外DVDのコメンタリーで何か 説明されていたりして…違ったらどうしよう!映画館で映画を 見る事に誇りをもっていますが、こういう情報量はDVD鑑賞派の 方が勝る時代なんだなぁ、と嘆息しておこう。 ところで米で『ダークナイト』、米で大人の映画としてヒットと書き ましたが、それでも向こうでは家族で見て、「こんな映画作りや がって、ウチの子に見せちまったじゃねぇかよ~!」という、 もっともな苦情も多発している様子。ティム・バートンの『バット マン リターンズ』も同じ様な騒ぎがあったなぁ(笑)。 ヒース・レジャーのジョーカーは素晴らしいが、J・シューマカーの ゲイっぽいバットマンの原点、60年代のTVシリーズのバットマン (劇場版の『バットマン オリジナルムービー』有り)の底抜けに 能天気なシーザー・ロメロのジョーカーの方が…幸せだろうなぁ。 l |