MAT's MAD MOVIES

カルト映画・B級映画…『歪な』面白映画紹介
ホーム
新作“脱線”レビュー
「歪な」映画目録
コラム
おススメ記事
プロフィール
お問い合わせ
白黒でチープで、十年早いアルジェント、はたまた
ルチオ・フルチなのか?『吸血髑髏船』

以前今は無き偉大な小屋(映画館)、大井武蔵野館で見て以来の

鑑賞。でもあまり話を覚えていない。自慢じゃないが見た映画は

結構覚えている方なんだが…今回改めて見て、なるほどコレでは

筋を理解していなかった理由が分ったような気が…

 

冒頭、金塊を積んだ貨物船が、それを狙った5人の乗組員

(金子信雄・内田朝雄・小池朝雄・山本紀行・そして?)の反乱で

全乗組員、その中には船医の西村晃とその新妻の松岡きっこ

(どうやってくっついたんだ、この二人?)もいた…、が殺害された。

松岡きっこは陵辱の果て殺されたらしい(直接描写なし)。なお一部

資料では「海賊に襲われ~」となっているが乗組員の反乱が正解。

事件は闇に葬られ、世間には貨物船は遭難し沈んだ事となった。

 

さて三年後のお話。松岡きっこには双子の妹(二役)がいた。この

事件の後孤独の身となったきっこ妹を、神父の岡田真澄が引き取り

世話していた。ちなみに二人の住む教会は湘南の海岸にある。

きっこ妹には恋人(入川保則)もでき幸せであったが、ある日潜った

海中でS・スピルバーグの『アミスタッド』状態の骸骨(この骸骨が

古風でチープだが味がある!)に出会い、それ以来行方不明の姉を

意識する様になった。

 

そしてある夜、海岸に謎の貨物船、あの遭難した船が迫る。きっこ妹は

とり憑かれたように乗り込む。骸骨と蝙蝠のたむろする船内で、事件を

記した航海日誌を見つけ…その後きっこ妹は失踪する。

 

この後当然ながら悪党が死んでいく。きっこ妹は自分がやったと告白

するのだが、どう見ても心霊的な要員で殺されている。好意的に解釈

すればきっこ妹にとり憑いた姉や他の乗組員の怨霊が…とすべきだが、

どうもオカルト的展開かスリラー的展開かよく分らない。山本紀行の死は

明らかに超自然現象のなせる技だが。ともあれ内田朝雄に小池朝雄の、

濃くも情けない死に様が拝めるのはナイス(笑)!

 

さてきっこ妹が、己の罪を告白した相手は神父の岡田真澄。それを

聞いた神父は突然きっこ妹の首を絞める。そう、岡田真澄の正体は…。

絞めた後、あんな事こんな事(サービス乳見せ有り)するからには、

きっこ妹は死んだはず。ところが直後に、あの貨物船が近づいて来た!

岡田真澄と金子信雄は、不審に思いながらも自分達を襲った者の正体を

確かめるべく船に乗り込む!

 

船の中には…ジャーン!と不気味メイクの西村晃が登場(えっ、死んで

いなかったのかよ!)。しかも只の船医だったはずが、ヒマに明かして

実験室(そんなもんあったのか?)で屍肉やら血やらを原料に発明した

(あんた凄過ぎ)鉄をも溶かす硫酸アルジホルムなる薬品で金子信雄を

突然攻撃、溶かしてしまう(この唐突ぶり、ルチオ・フルチの『ビヨンド

を思い出した)。でも溶ける描写は古風な特撮で味がある!

 

ところがケレン味たっぷりに登場した西村晃、気合が入りすぎたのか

ズッコケて転落(ネタではなく事実です)、落ちた所にあったウインチに

巻き込まれバリバリっと潰れちゃう(D・アルジェントの『インフェルノ』の

ラストの魔女位、これまたマヌケ)。これを見た岡田真澄、あぁ良かった、

都合が良いから例の硫酸撒いて船を沈めちゃえ、と図る。

 

が逃亡を図る岡田真澄の足にしがみ付いたのがきっこ姉のミイラ。否、

ミイラというには生きたままの姿。パニクった岡田真澄はナイフで刺すと

鮮血が飛び散るが…離れない。そこに何故か恋人と船に乗り込んだ、

きっこ妹(えっ、死んでなかったの?)が現れる!

 

きっこ妹、狂った西村晃がきっこ姉を蘇らそうと自分の血を姉に輸血し、

それで姉のミイラは新鮮、とイヤな事実を岡田真澄に告げる(これって

吸血行為か?でもタイトルに関わる「吸血」な行為はこのセリフのみ)。

仕舞には岡田真澄も硫酸に触れ溶けてしまう。全てが終わった後

きっこ妹は、恋人に別れを告げると彼を海に突き落とし、自らは姉の

亡骸、そして船と共に沈み、すべては波間に消えてしまうのであった。

 

ラストの余韻他、全編に漂うオカルトムードが捨てがたい作品ですが、

正直話のまとまりが悪い。唐突なスプラッターや、辻褄の合わない

展開は、後のイタリアンホラーのノリに近い。そんなチグハグ感を上回る

強烈な印象を残した事も含めて。好意的に解釈すれば、全てが船に

とり憑いた怨念の為せる業でしょうが、同様の設定の映画には、同じく

西村晃の『怪談せむし男』の方が、雰囲気・まとまり共に完成度の高い

作品、と言わざるを得ないでしょう。ちなみに海岸に迫る幽霊船という

イメージ、翌年のアニメ映画『空飛ぶゆうれい船』に影響与えている?

 

この映画はイタリアンなすっとこどっこい感を楽しめる方と、川上景司の

味のある特撮を楽しみたい方は必見。監督の松野宏軌は映画では

その後あまり活躍されていませんが、その後テレビの演出に移り『必殺』

シリーズの演出で大活躍、特に『必殺Ⅴ』以降の悪ノリした、完璧に

狂ったタイトルのエピソード(笑)も数多く手がけています。『吸血髑髏船』

はシリアスなのに暴走してしまった、『必殺』シリーズの原点なのか?

 

お話崩壊度 ★★★★
特撮度 ★★
個性派役者度 ★★★
松岡きっこ度 ★★★★
主水、クモ男を捕り逃がす度 ★★★★★

 

1968年 松竹

監督 松野宏軌 脚本 下飯坂菊馬・小林久三 特撮 川上景司       

出演 松岡きっこ 西村晃 入川保則 岡田真澄 

内田朝雄 小池朝雄 金子信雄


2008年9月11日 シネマヴェーラ渋谷にて鑑賞

(併映 『東京ディープスロート夫人』)

 

             l