私のような世代の映画好きな人間は、何故映画好きになった のだろう?田舎者であった私は子供の頃そんなに映画館には 行けなかった。それがビデオバブルの学生の頃、生意気にも 偉そうに名画座に通っていた。では、その前に映画に興味を 持たせてくれたものは?私の場合間違いなく、子供の頃見た 怪獣映画や特撮番組が原点である、と臆面もなく告白します。 子供だけに喜々としてと怪獣ものの番組を見ていましたが、 やがて円谷英二など作品の背景に作り手、スタッフがいる事を 意識しだし、またTV番組も16ミリで撮影されていた当時、映画 出身のスタッフの手によって作られた作品が、知らない間に 「映画の見方」を教育してくれたのでしょう。今でこそ色々な ジャンルの映画を楽しみますが、私の原点はここだったんだな、 またそれだけレベルの高い作品を子供に見せてくれたんだな、 と感謝しています。 そんな私だけに今だ怪獣映画はイイ年こいても大好き、今だに 過去の作品をスクリーンで見る事には拘っていますよ!で今回 『鯨神』を見てまいりました。えっ怪獣映画じゃないって?いやいや、 怪獣ならぬ鯨を大映特撮陣が手がけていますし、音楽は巨匠、 伊福部明だし、この作品他の非怪獣な特撮物を数多く手がける 田中徳三監督の作品だし。 シネスコ画面でみる鯨特撮の迫力のある事よ!そりゃどう見ても ミニチュアです(笑)。鯨と漁師があやつる小船の特撮(小船の上の 人形が、えっちらおっちら漕いでいます。微笑ましい…)はチャチに 見えますが、同時期の東宝特撮と同じく、本編との絡みが巧みで あまり違和感を感じません。『ガメラ』以前の作品ですが、大映は 歴史物、スペクタル物の特撮の実績はすでにある時期、見劣りする ものではありません。そして何といっても鯨と漁師の肉弾戦!改めて 考えれば、日本の怪獣映画にはあまりない貴重なシチュエーション (東宝だと・・・『獣人雪男』とか『ラドン』のメガヌロンなどか?でもこれ、 怪獣って大きさじゃないし)、映画館で見る価値は大アリです。 そしてなんといっても勝新、本郷巧次郎が見せます!勝新が肌を 黒光りさせて最初に登場するシーンは拍手もの。いつもながらの豪快な 演技を、この映画では「勝新寡黙バージョン」で見せてくれます(軽妙な セリフで見せる軽い演技も好きですが)。また本郷巧次郎もその勝新と 対をなす存在で、こりゃ見事な「漢の映画」になっています。 勝新、本郷巧次郎の演技を見て思った事ですが、『鯨神』が気に入った 方には、ぜひ東映版『ジャコ万と鉄』をお勧めします!同じく漁場(こっちは ニシンだけど)での熱い男の対決を描いた映画。この深作欣二作品で 対決する漢は高倉健に丹波哲郎!『鯨神』と二本立てなら、間違いなく 感涙ものですぞ!!と勝手に推薦させて頂きます。 ところで原作は宇野鴻一郎ですがエロくありません。いや、そもそもエロく なる前の、芥川賞獲った作品ですから。賞を獲って翌年にさっそく映画化 しているんですね。宇野鴻一郎の作品が大映の特撮映画になり、その 宇野鴻一郎作品ををポルノで撮った、金子修介が後に『ガメラ』を…いえ、 こじ付けなんですけどね(笑) 特撮映画度 ★★★★ 肉弾戦度 ★★★★★ 勝新度 ★★★★ 1962年 大映 監督 田中徳三 脚本 新藤兼人 原作 宇野鴻一郎 音楽 伊福部明 l 出演 本郷巧次郎 勝新太郎 藤村志保 江波杏子 志村喬 2008年9月1日 シネマヴェーラ渋谷にて鑑賞(併映 『無人列島』)
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