MAT's MAD MOVIES

カルト映画・B級映画…『歪な』面白映画紹介
ホーム
新作“脱線”レビュー
「歪な」映画目録
コラム
おススメ記事
プロフィール
お問い合わせ
格差社会の怪談話、『怪談 蛇女』

中川信夫といえば押しも押されぬ怪談映画の巨匠である。それ

以外の作品も数多く手がけておられるので、職人監督としての

仕事の一部、と見る方もおられますが、詩作や死生・人生感を

意識された言動など拝見すると、ご本人も大いに意識される処が

あるのでしょう。監督は多くの映画会社を渡り歩いた後フリーに、

フリーとなってからはTVの仕事が多くなりました(幼い頃には中川

信夫演出の怪談ドラマを、数多くTVにて目撃しました…)。本作は

映画の仕事では、最後から2番目に製作した怪談モノ、間もなく

映画からTVに活躍の場を移される時期の作品。ちなみに最後の

怪談映画は遺作となるATGの『怪異談 生きてゐる小平次』。

 

その本作ですが、以前の怪談映画に比べると少々変種。舞台が

明治になっている為、怪談に付きものの封建制度な設定(殿様と

家臣、武士と町人、男尊女卑)が「地主と小作人」という形に変形

している。よって恨みチームは小作人一家(小作人・西村晃、妻・

月丘千秋、娘・桑原幸子)、一方恨まれチームは地主一家(地主・

河津清三郎、妻・根岸明美、バカ息子・山城新伍)の構成。

 

西村晃の死後、借金のカタとしてに地を取り上げられた月丘千秋と

桑原幸子。なお西村晃の自分の耕す土地への執念はまるで妖怪・

泥田坊(どろたぼう)(笑)。地主の家でこき使われた妻と娘は、

想像通りまず月丘千秋は苛め殺され、桑原幸子は山城新伍に

手ごめにされ喉を切って自殺、この時気管を切った為『子連れ狼』の

「虎落笛(もがりぶえ)」状態(判ります?)でチト怖い。ちなみに

桑原幸子の恋人、村井国夫もこの件を恨んでで死ぬ事となるが、

化けては出てこない。この人は生前に行動に出たからか?

 

こうしてお膳立てがそろった処で、いよいよ化けて出てくるのだが、

肝心の蛇女は??これがありがちな、一連の事件とは無関係に

地主一家に嫁いできた「新妻」の賀川雪絵。あの、賀川雪絵が

つつましい新妻(笑)、ってだけで十分貴重な存在だが、祟られた

山城新伍の目には、彼女が『Xメン』の廉価版のミスティーク

じゃなかった蛇女に見えたのだった!この裸身に施したメイクは

見ものかな?ともあれそんなこんなで山城新伍は自爆死。

 

この後唐突に警察署長(丹波哲郎)に叱られたり、拝み屋に呪いを

解かせようとしたりするが、最後は河津清三郎狂乱、根岸明美を

手にかけた後に、自滅するのであった。

 

恨みチームがあまりにも薄幸かつ健気(決して死ぬ時に、恨みの

言葉を口にするようなキャラではない)なのが、かえって悪人への

報いを際立たせている処などは、過去の怪談を意識して変化球で

責めてきたのでしょう。最後に西村晃・・月丘千秋・桑原幸子そして

村井国夫が揃って成仏する姿は、因果応報を越えて悟りの域に

達したかのような美しい場面(…まあ見てやって下さい)。

 

格差社会となり「蟹工船」が流行る昨今、実に身にしみる話となって

しまった『怪談 蛇女』。この作品を経て最後の中川信夫の怪談映画

が『怪異談 生きてゐる小平次』、と並べると意味深いです…

 

怪談度 ★★★
賀川雪絵度 ★★★★
格差社会度 ★★★★★

 

1968年 東映

 

監督 中川信夫 脚本 中川信夫・神波史男 音楽 菊池俊輔         l

出演 河津清三郎 山城新伍 根岸明美 賀川雪絵 


2008年9月16日 シネマヴェーラ渋谷にて鑑賞

(併映 『海人舟より 禁男の砂』)

 

       

DVDパッケージ。

やはり賀川雪絵がデカイ!

(実は然程登場しない)

恐「ふ」の味噌汁 に戻る

 

ホーム に戻る