さてアメリカ映画といえばハリウッドであるが、決してそれが全てでは無い。 「ボルチモアのナイスな悪趣味王」=ジョン・ウォーターズや、「ピッツバークの リビングデッドな賢老」=ジョージ・A・ロメロといった地方の群雄もいる(ま、 現在ある程度の規模の作品は・・・田舎だけじゃまず撮れないけど)。しかし アメリカ映画のもう一つの軸と言えば、やはりニューヨークである。 このNY勢の映画といえば、ウッディ・アレンなど小粋・アートな映画が真っ先に イメージされる。が、NY映画人にもエンタメ一直線な方々がいた! まずはNYを舞台にベトナム帰りの“ショボイ男”、ロバート・ギンディが犯罪者 親しんだ世代には忘れられない作品。監督はジェイムズ・グリッケンハウス。 NY娯楽映画・・・否、正しくはNYスットコ映画の巨匠である。おっと、『エクス も忘れてはならない。 一人。米映画協会(AFI)が「下ネタ映画ベスト100」を選べば(そんなモノ選ぶ はずが無い!)間違いなく紹介される人物(笑)。まもなくレイトショー公開される 最新作『バッド・バイオロジー 狂った性器ども』(・・・汗)は、例によって 下ネタ直球勝負、NYが舞台。監督、自分のフィールドでは怖いもの知らず・・・ しかしNY娯楽派映画人の大本命といえば、真の鬼才・ラリー・コーエンである! この人の才人ぶりは、私の大好きな最低映画館において、この人を実に 的確に評価しておられる!その紹介がこちら。 楽しめる作品『空の大怪獣Q』も冷静に考えると、「NYに巣食う空飛ぶ怪獣が、 太陽を背景に飛ぶからNY市民には見えない=どっから見ても見えないのか、 オイ!」とか、「ラストのテロップで、(事件に巻き込まれた主人公が)『NY市 から(情報料として)100万ドルを手に入れた・・・無税で!』=そこ、強調する ところか、コラ!」と、何とも奇妙なテイスト(笑) *恐るべき「Q」(=古代アステカの神さん?、ケツァルコアトル)の凶行だ! ストップモーションアニメのモンスター好きにはたまりませんなぁ。ところで 最近でたDVDでは、上記のラストに流れるテロップが無かったとの情報が。 流石に恥ずかしいので外したのか?? しかし「奇抜なアイデア」で産んだキャラクターを、「見事な脚本力」で映画化・ 続編まで(多少強引に)製作してしま力量はこの人ならの力技。やっつけ仕事の *テレビ放送に馴染んだ世代には『地獄のマッド・コップ』と言うべきか? に殺害退場(笑)、ロバート・ダヴィにバトンタッチ。『~3』では“マニアック・ コップの花嫁”(?)登場とダメ続編映画フラグ林立。しかし力技で魅せる! 『悪魔の赤ちゃん』・・・オリジナルは企画段階で死亡フラグ立ちまくり。 「モンスター赤子、着ぐるみにニワトリを入れて作ろう」→「やっぱ無理だったね、 ハハハ・・・」、当たり前だ!しかしそんな作品に、多少強引に社会問題・親子 愛・ブラックユーモアをねじ込み、泣ける要素まで加えて、足掛け12年で3作 作ってしまうという力量。恐るべし、ラリー・コーエン! そんな愛すべき作品、『悪魔の赤ちゃん』がリメイク?本当にネタが無いんだ・・・ でも「赤ちゃんが暴れる→お粗末な特撮」の時代ではない。CG全盛の時代、 赤ちゃんをスポーツカー並みの速度でハイハイさせようが、二丁拳銃でガンファ イトさせようがお好み次第。もう企画段階で死亡フラグな映画とは言わせない、 はず・・・さて、我らの前に現れた作品は?? ~以降ネタバレ含む、公開中につき警告大!~ オリジナルのストーリー・設定そのまんまではありません。主人公は大学生 なんだけど、あらら「出来ちゃった」・・・最近の奨励表現なら「おめでた」で学業 拷問されたり妊娠したり・・・大変だなぁ。彼女のこれからの幸多からん事を、 陰ながら心より祈りたいものである。 そしてエライ状態で出産、その時分娩室は惨劇に!これはオリジナルと一緒か。 で、生まれた赤ちゃん、見た目は可愛い。ここからオリジナルと大きく異なる。 レノアは赤子を連れ帰り、親子水入らず・・・というより、アメリカのド田舎なので 嫌が上でも密接に暮らすのであるが、赤子=ダニエルちゃんの実にヤンチャ な一面に気付き始める。 いきなりモンスター化した赤ちゃんが登場!これは勘弁と逃げる両親。が、 親の愛に目覚めたのも虚しく・・・というオリジナルと大きく異なり、妊娠→出産 した女性の不安感、また話が進むにつれ語られる赤ちゃんへの罪悪感・・・ といった心理描写に重きが。無論暴れん坊ダニエルの活躍も見せます。が、 しかし残念ながら、この心理描写が今一つ徹底していません。上映時間83分 では無理かなぁ。ダニエルに対するレノアの心理の変化、また母子に対して ダンナが見せる態度と、掘り下げられる要素はあるんだけど・・・。 あと心理描写が弱い原因の一つが、シネスコのワイド画面で、引きのシーン (人物が比較的小さく、背景が多く映り込む)が多い。しかも照明があまりに ナチュラル。素人考えでもクローズアップを多用し、画面の色調は白とか青とか に統一する(寒々した感じに)か、暗い画面にすれば緊迫感が出せると思う・・・。 監督は『13』のジョセフ・ラスナック。で、撮影に・・・日本版チラシの英語表記 ドーフの名が。が、IMDBには彼の名は無い。というか撮影監督が明記されて いない。何かあったのか??劇場公開した日本と、本国での扱いの差がクレ ジットに現れただけかもしれないが・・・どんな事情か気になっています。 極限状態に陥って行く、人間の姿を描いていれば・・・」と語った事があったと 記憶しています。『マタンゴ』が上映時間2時間強なら、それも可能でしょう。 しかし特撮スタッフ&美術スタッフ、照明&撮影の方々と共に生み出した 映像が、ドラマ部分の弱さを補って余りある、不気味さ・緊迫感を漂わせる 『マタンゴ』ワールドを作り出していました。『ダニエル 悪魔の赤ちゃん』も、 もう一工夫あれば・・・と思うのは私だけでしょうか? が物語が後半に入り、一軒家での赤ちゃんとの攻防となると、画面はホラー 映画王道の暗い映像となり、調子も一変する。この場面はどなたにも素直に 楽しめる作りになっています。 ここで一つ。本作のダニエル君、実にエグい凶行に及んでいますが、彼の 凶行は良い意味で禁欲的。暗闇を生かし、観客に多くは見せないショッキング シーンとなっています。冒頭に述べた「CGキャラ大活躍」みたいな、暴挙に 及ばなかった勇気に感心。金が無かっただけ?もっとチープな映画でも、薄っ ぺらなCGキャラが闊歩する昨今、この決断は良いと思います。この控え目 (でも特殊メイクで表現する惨状はエグイ)な凶行の見せ方は50~60年代の ホラー映画を思い出させます。 *これがダニエル君・・・では無い(笑)。赤ちゃんの凶行を遠慮なく見せれば のお仕事につき批判は一切許しませので、「グロ注意」の注意表記は無し! さらにラスト。最近に珍しい「家が●●になり、何の説明も無く唐突にEND」 これまた50~60年代ホラー映画っぽい!久々にこういうオチを見せられて 一寸嬉しかった。ホラー映画ファンは「おホホッ!(笑)」と思うんじゃない? でも「もっとちゃんと説明しろっ!」て思う方が普通なのかなぁ。 結論。70年代のダメホラーのリメイク、CG赤ちゃん大暴走映画と思いきや、 『ローズマリーの赤ちゃん』風味な物語を、50~60年代ホラー映画のテク ニックを交えて見せてくれた、ファンには意外に嬉しい拾い物でした。この 映画が日本ではスクリーンで見れるとは、またまた銀座シネパトスには 感謝感激、雨あられでございます。 なお本作は有り難い事に試写で見せて頂き、早めに記事をUPできました。 なお、試写会場には「妊娠中の奥さんを連れたご夫婦」がおられ(ネタでは 無い、事実!)、その胎教を重んじる姿勢には小生、感服いたしました(笑)。 そこのホラー映画ファン、この美しいご夫婦の姿を見習って鑑賞する様に!! ・・・最後に。この映画には妊婦マニア・授乳マニアも楽しめるぞ! これも事実だから、僕、恥ずかしいけど書いておくね、仕方が無いから・・・・。 よい子のみんな、これを鑑賞の手引きにしてね!じゃ! |