『大虐殺』、私の様な下らぬ人間には(そして多分あなたも…) 全くそそられるタイトルである。そそられ度が高すぎて、ビデオ・ DVDで出た際は『暴圧 関東大震災と軍部』と改題されている。 流石にマズイんだろうなぁ、念の為ご注意。ちなみにタイトルの 『大虐殺』はワンシーンのみ。もっともインパクトのあるシーンが 映画全体を差し置いてタイトルになる、B級映画ファンの言う 『ゴースト 血のシャワー』方式(笑)。 映画は関東大震災とその際の朝鮮人虐殺(…現在でもヤバイ 事をよく取り上げるよなぁ)、甘粕事件、その後の反政府テロ 事件である、ギロチン社事件(凄過ぎる名前だ!)を元ネタに、 しっかりエンタメしている作品である。まず冒頭の関東大震災、 最初だけのシーンながら、結構しっかり撮っていてビックリ。 これだけでも映画館で見る価値有りです。まあ当時はこういう シーンは一回撮ってしまえば使い回しも効く(特に新東宝は) ので、力を入れたのでしょう。 そして震災の混乱時におきた、軍部による朝鮮人・思想犯虐殺の シーン。『プライベート・ライアン』を知った我々には、バタバタ人が 倒れているだけだの、よく見りゃ銃撃に96式(99式?)軽機関銃 使ってるだの、アラや考証ミスをツッコむ事も可能だが、まだ戦争 体験者の多い時代のなせる技か、それともエキストラを大量に 使えるからか、白黒映像のマジックか、これが結構臨場感がある。 昔の映画の表現力って馬鹿にならないものですね。 このリスキーなシーンがタイトルになっている訳ですが、実態は どの様ななものだったかは、資料も錯綜していますのでコメントは 差し控えます。但し新東宝の大蔵貢総帥の商売のネタとしては 十分であった事は間違いない。不謹慎は置いといて映画ファンなら 震災時の千田是也(演劇界の重鎮と見るか、はたまた『バラン』 『宇宙大戦争』の人と見るかはあなた次第)が震災時に体験した エピソードに思いを馳せるのも良いかも(芸名の由来ですからね)。 脱線しましたが次に出るわ甘粕事件。甘粕大尉を坂本龍一 (『ラストエンペラー』では…って補足するのは余計?)ならぬ、強烈 演技の大御所・沼田曜一が演じていますが…遠慮したのか控えめ (殺害シーンを含めて)な描写でチト期待外れ。まあ悪趣味に描く のは憚られるでしょう。 映画の中盤以降は、以上のごとき軍部の横暴に憤激したテロリスト、 天知茂の活躍(?)がギロチン社事件を元ネタに展開される。正直 テロをやる人にしてはかなりマヌケ(笑)。昨今のカルト・原理主義な テロリストではなく、ロシア文学的な「悩めるテロリスト」描写には、 良き時代(?)を感じさせてくれます。天知茂の映画演技は、大きく 「喜々として悪役を楽しむ」系譜と「悩める優男」の系譜がありますが、 本作は明らかに後者。子供に「月の砂漠」を歌って聞かせるシーンは チト笑えるけどいいシーン。 天知茂のテロもマヌケなら、彼らをあっさり侵入させてしまう陸軍も それ以上にマヌケ。まあ大らかで結構、という事にしておきましょう。 など右寄り作品で有名。いや、この人が右寄りではなく、大蔵貢の 偉大なキワモノ商売企画に、便利に使われた方の印象があります。 しかし後にピンク映画に転向され、その後我が国の拷問映画史(?) に名を残す作品、『日本拷問刑罰史』は自らで製作・監督されてます。 御用監督が本当にやりたかったのは、こういう作品だったのか?? 歴史教科書度 ★★ キワモノ度 ★★★ ズッコケ度 ★★★★ 1960年 新東宝 監督 小森白 製作 大蔵貢(!) 出演 天知茂 北沢典子 細川俊夫 沼田曜一 2008年8月28日 シネマヴェーラ渋谷にて鑑賞(併映 『女体渦巻島』) l |