クリント・イーストウッドはワーナー・ブラザース映画で映画製作して います。イーストウッドは自分の映画、反骨精神に溢れ芸術性・テーマ性 が高くアカデミー賞を獲るような作品・・・を撮らしてくれるワーナーの 為に、定期的に自身が監督・主演の商業映画を提供しています。 そんな賞に縁の無い、やや規模も控えめな映画を挙げてみますと、 (2002年)・・・『チェンジリング』の次に公開となる『グランド・トリノ』も、 評価は高いが性格的にはこういった作品に近いのかな??? イーストウッドの賞を獲る映画は当然面白いが、こんな手堅い職人 仕事の映画には、それらとは別の魅力があり捨て難い存在だと思い ます。但しこういう地味な映画、クライムorサスペンス映画等はヒット しにくい。スター級の役者が出ていても日本での公開されれば幸い、 現状はそんな有様。軽く楽しむには良い映画なのに・・・ いきなり脱線したが、今回紹介する『ザ・クリーナー 消された殺人』 もそんな映画である、という前振りでした。主演はサミュエル・L・ジャ クソン、共演にエド・ハリス、エヴァ・メンデス、ルイス・ガスマン。映画 ファンなら見たくなるでしょ~、でも世間一般には通じないのか(哀)。 そして監督は一世風靡な男、レニー・ハーリン。90年代はハーリンの 為にあったのに・・・(但し前半だけ)、これは見届けねば! ~以降ネタバレ含む、公開前につき警告大!~ 今回サミュエルどんは、犯罪現場のお掃除オジサンを演じます。 良くない。いわゆる特殊掃除人・・・ワケ有り現場を掃除するお仕事。 犯罪現場だけでなく、孤独死・ゴミ屋敷といった方面の清掃も担当。 映画の冒頭で、サミュエルどんの語りでこのお仕事が紹介されます。 一人暮らしのご老人が孤独死~家族が発見あらショック~誰かが お掃除しなきゃいけないのでサミュエル出動!実はこの映画、ホール 試写で見ました。平日の試写らしく周囲には50~60頃のジジババが うじゃうじゃで、見事に孤独死予備軍(オイっ!)。本人がそうでなくとも、 身近に孤独死遭遇の可能性は更に大の世代ばかりじゃないか! こんなお話見せられたら硬直するぞ!(笑)・・・でもこの語りのオチで で場内は爆笑、まずは一安心(余計な心配してるんじゃない!)。 そんなサミュエルどんは元刑事。訳有りで退職してこの稼業になり、 今は娘(演じるはキキ・パーマー。黒人娘フェチにウケそうな娘さん!) と、これまた訳有な事情の結果、寂しく二人暮らしの日々。 *キキ・パーマーがアメリカでは何かと話題になる、スペリング大会に 挑戦する少女を演じた映画、『ドリームズ・カム・トゥルー』。原題は 『AKEELAH AND THE BEE』。何てインチキかつ大胆不敵な邦題(笑)! ある日サミュエルどんは、お仕事で殺人事件の現場をお掃除します。 が、はめられていた!『CSIマイアミ』のホレイショ様らによる(ウソ)、 科学捜査「済」の現場としてお掃除したつもりが、実は表にでていない 殺人事件の現場をキレイにしてしまったのである。こんな手の込んだ 事が出来るとは・・・サミュエルどんを騙したのは警察関係者か? この殺人の被害者やサミュエルどん、また周囲の人物にも後ろめたい 過去が有り、表沙汰に出来ず、互いの腹を探りあいながら事件は展開 してゆく・・・という凝った設定(凝り過ぎた無茶設定とも言える)で送る サスペンス映画に仕上がっております。 という映画ですので、謎解きの楽しさは有りますがド派手なアクション やグロ描写期待はお門違い、奇抜な映像やイッちゃった熱演もない、 手堅くまとまった犯罪映画の小品といった仕上がりでした。 だからって面白く無い訳ではない。サミュエルどんといえば「四文字 言葉連発」や「奇抜なヘア」が売りの熱演キャラがウケる役者さんで すが、本作の役柄は「心に過去の出来事を秘めた、背中で語る親父」 をじっくり見せてくれます。熱演系の役はウケる(コケる)要素が誰の 目にも判り易いですが、本当はこういった地味な役柄の方が、演じる 役者さんの真価が問われるものだと思います。 そういった意味で今回静かな演技、その内面をじっくりと表現した演出 は、サミュエルどんの暴走熱演時とは異なる魅力を見せてくれます。 これだからこういった一見地味な映画を観る事もまた楽しいんだなあ。 最近は監督業にも進出、エド・ハリスも手堅い演技を見せてくれます。 映画でエド・ハリスがサミュエルどんに、どう絡むかはヒミツ・・・。 またこの映画サミュエル親娘にエヴァ・メンデス、ルイス・ガスマンと マイノリティな人々が出てきますが、劇中のサミュエルどんの部下、 「ヒスパニック系=元犯罪者」である人物の使い方が、世間のステレオ タイプと異なりイイ味出してます。脚本の新鋭、マシュー・アルドリッチ という人は、目新しいアイデアを盛り込みつつも、手堅い人物描写が 出来る方と見ました。 ところで監督たるレニー・ハーリンの仕事ぶりは・・・かつての派手な アクション映画と異なり、淡々と撮っている感じ。それが役者の押さえた 演技の引き立たせているが・・・意味も無くやや手振れな映像と安定 した映像を、無頓着につないでいたりして「やっつけ仕事」か?と思える だけに、編集段階・製作事情での問題だったのか?? しかし80~90年代の、アクション大作を撮った方々・・・ジョン・マクティ アナン、ジェームズ・キャメロン、ウォルフガング・ペーターゼン、キャス リン・ビグローetc・・・もっと大事な方を忘れている気もするが、現在は 監督業より製作にシフトした人の方が「勝ち組」に思えるのは気のせい? もっともポール・ヴァーホーヴェンのように我が道を行くの方もいます。 無論ついていきますぜ、ヴァーホーヴェン師匠! その面々の中でレニー・ハーリン・・・ジーナ・デイビスと結婚、ラブラブ サメは何故かメス。しかもこのサメ、弓矢で殺される・・・アーチェリー 競技の名手でもある元嫁、ジーナ・デイビスへのあてつけだろ!(笑) *こう書くとジーナ・デイビスが「さげまん」になってしまうが、レニー・ ハーリンにはそれ以前に大コケ、ラジー賞受賞の大作があった! それが『フォード・フェアレーンの冒険』だ!(日本で公開何日目で 打ち切りだったっけ・・・)今見るとバカそうで楽しそう、そしてバブル 時代を思い出す映像ですなぁ~! 結局ジーナ・ディビスとの「失敗作(あくまで興行的、て事でファンな方は ご勘弁を)」は、レニー・ハーリンとサミュエルどんの男の友情(?)を 産む効果だけはあったようだ(『ザ・クリーナー~』の製作にサミュエル どんの名も有り)。・・・あっ、『ディープ・ブルー』のサミュエルどんの 最期は笑えるので必見。熱演パターンでお決まりの、演説が始まるかと 思いきや・・・(笑) ともあれ現在、本作のような地味な印象を与える作品が公開される 機会が失われているだけに、この作品が観れた事を私は感謝しており ます。こういった映画にこそ監督・役者の「派手さで誤魔化す事ができ ない」真価が発揮されると考えておりますので。一昔前なら地方二本 立ての作品や、小さめの全国ロードショーにかけられたものですが・・・ 今は大作やテレビ局製作の邦画がシネコンに溢れる時代。その中で この映画がかかる事に、配給会社さんと映画ファンの砦・銀座シネパトス の存在に感謝したい。感謝するから微妙な映画を色々見せて(涙)! |