チェ・ゲバラといえば『長髪大怪獣ゲバラ』・・・ではなくて、全世界に信者のいる カリスマ的存在。その人をソダーバークが如何に描いたのか。また本来1本の作品 になるはずが2部作に、どう処理されたのか・・・。色々気になって見ました。 個人的には「後編のお話が見たくて、前編にも付き合った」状態。 さて私如きのレビューでは、チェさんの生涯について深く語ろうとは思いません。 「心情右翼・言動左翼」な私ですが、チェさんが立派な人物であった事は充分に 承知しております。そんな立派な人物の紹介は他におまかせして、ここでは映画が 如何に描かれたかについて記してまいります。 まず『28歳の革命』。物語はカストロらと共に、キューバに渡るチェさんの姿から 国連での演説の為に来たチェさんの姿を挟み込みつつ、革命戦争の経過については、 実に淡々と時系列に沿って描いております。 その革命戦争の描写は、始終チェさん周囲の描写のみ。神の目線や大層なナレー ションもございません。山歩きに疲れ喘息に苦しみ、同志との軋轢には悩み、何とも ショボい戦闘を繰り返し・・・ あっ、「ショボイ戦闘」と書きましたが皮肉ではありません。「二丁拳銃による冗談 みたいなガンアクション」か、「要塞化された敵陣に、肉弾・鉄弾で総攻撃な戦争映画」 になれた身には、「敵味方共少人数でライフル・カービン銃他を使用、散発的で 控えめな戦闘描写と言えましょう。最後の方での大規模な市街戦も、明るいカリブの 日差しの下淡々と交わされる光景が印象的。 こういった部分はケン・ローチ監督のスペイン内戦映画『大地と自由』に似ています。 が、この映画はそれよりエモーショナルな描写・政治的メッセージが不在で遥かに 禁欲的。劇中で大層な演説を始めたり、前編最後で大層な音楽が流れれば間違い 無く旧ソ連か、一昔前の中国それっぽい映画なんですが(笑) 続いて『39歳 別れの手紙』。前編から跳び、いきなりチェさんの手紙を読むカストロの 姿から物語は始まります。よって来日したチェさんの姿も無し。 後編は別の時間を挟み込む事もなく、より淡々とストイックにボリビアに入国してから~ 最期の日までを、時系列に沿って描いていきます(日数カウント付き)。現地の連中に 支援もされず、現地の住民に理解もされず、孤立し破滅してゆく姿を・・・。 魔道を歩めたいうのに・・・ しかしチェさんは最期まであまりもに良心的かつ理性的。記されたものを読む限り 事実なのでしょう。そんなチェさんだけに、ついに彼が「ロバにブチ切れるシーン」、ここ のみ劇的に演出された最期のシーンは、実に胸を打つものが有ります。ラストに前編 あの作品も一人の男の、問題(障害)多き生涯の物語だったよなぁ・・・。 この映画。チェさんファン以外の方には、余りに淡々と長い映画じゃないの?(予備 知識豊富な)チェさんファンには後編だけで充分じゃないの?って思いました。興行も 「前編は見たけど、後編は・・・」という方が多かったのか、尻すぼみに思えました。 *ああ、キューバ革命もコレくらい脳天気であれば、チェさんも苦労しなかった 何やら、チェさんっぽい人も出ていますなぁ(苦笑)。 悪役に「デストロ」っていたよなぁ・・・今度映画化される『G・I・JOE』のデストロ、 な~んか小悪党っぽいんですが。 ↓ http://www.gijoemovie.com/ さて、この映画を撮ったのはスティーブン・ソダーバーク。何とも色々な映画を撮る 人物です。映画監督には判りやすいスタイル・・・「同時進行を画面を分割して 見せたり、ワンショット長回しがあったり」「二丁拳銃にスローモーション、白い鳩」 「作る映画作る映画、タイトルの前にJOHN・CARPENTER'Sのクレジット(笑)」 などをお持ちの方がいるものです。 この様なスタイル無き映画監督の一人がソダーバーク。スタイル無き映画監督に こそ、実は映画そのものに拘る人物・・・「今回はこんなテクニックを使ってみよう」 「折角の新技術、活用してみよう」であったりするものです。ビデオ撮影に拘ったり、 如何にもハリウッド映画調であったり、ドキュメント映画の手法であったり。 今回ソダーバークは実に淡々とした映画を撮りましたのが、意図した演出・編集も さることながらそれを支えたのが、REDデジタルカメラ。私もそんなに詳しくないの ですが、35ミリの質を持ち高画質・高感度かつ小型のカメラとの事。なるほど多くの シーンが自然光で撮られナチュラルに見える訳である。こういった新技術を早速取り 入れるのが、実にソダーバークらしい処。 そんなソダーバークの盟友がG・クルーニー。彼も芸能一家の出身らしく様々な 演出スタイルの作品に挑戦しています。二人が組んでいる作品を挙げると、スタイ 私はこう見えてタルコフスキーファン!映画ヲタクな二人がタルコフスキーに タルコフスキー的な映像だぞっ!!ゼイゼイ・・・いかん、取り乱した・・・(汗) そんな二人を越える真性映画ヲタクが、かのS・スピルバーク。この大御所も様々な 手法・技術を駆使し、過去の名作に愛情を注いだ映画作りを行っています。 「ハリウッドリメイクされる『ゴジラ』・・・なに、エンタメ志向のドイツ野郎が撮る? の後半で思いっきり『ゴジラ』にオマージュを捧げたシーンを撮っています。ついでに 『キングコング』にもオマージュを捧げ、ラストは映画崩壊寸前まで遊んでいます。 日本でTV放送された時の、90分カット版以上にレイプするんじゃないだろうなぁ! ・・・こ・の・う・ら・み・は・ら・さ・で・お・く・べ・き・か!」 ラストで、『ソラリス』以上に『惑星ソラリス』なシーンを見せています。タランティーノ のような判りやすい映画ヲタクより、真性映画ヲタクの執念の実に恐ろしき事よ。 *流石にラストシーンの動画は見つけられなかった『マイノリティ・リポート』。地上波の TV放送ではカットor縮小されがちな場面ですが、タルコフスキーファンには是非見て 頂きたいラストである。『惑星ソラリス』ラストシーンに捧げられたあの映像を。 決して、「目隠しコントで、腐ったモノを口にするトムちん」「ドラえもんの秘密道具で、 ブサイクになるトムちん」だけが、見せ場の映画では断じてない!(笑)。 締めは革命の映画だけに総括!『39歳 別れの手紙』で、チェさんの苦難の道程を 映画がした、チェ・ゲバラファン必見の映画である!しかしご本人も書いている、山篭り 革命戦争を表現するには、映画という手法には重大限界がある! ・・・それは「臭い」を表現出来ない事である。何をアホな、な発言ではあるが、文学で あれ映像であれ、「臭い」を伝えられないのが限界であり、それが表現出来ればそれ こそが、ご本人が記した革命戦争の真の苦難が実感出来るというものである。 グロ映像に視覚で興奮する人は多いが(私もか・・・)、それに「臭覚」が付いていれば 大抵の人はドン引きになると思うぞ!! そんな表現の限界を追及した人は・・・ |