さて70年代も末になってくると、東宝映画といえど自社のみでの映画製作 1 はますます少なくなってきます。否、東宝映画こそ他社に先駆け製作部門 と配給・興行部門を分離、会社として生き残りを図った結果であり、現在に 至る訳であるが・・・映画製作の環境はより厳しさを増していた。 そんな当時、東宝の稼ぎ頭の一つであったのがアイドル映画。アイドルの 所属する事務所にも出資して頂き、ファンの動員も見込める有り難い存在。 山口百恵の映画などが人気であった時代であり、そういった映画を数多く 手がけた一人が小谷承靖監督。 さて『愛の嵐の中で』は、桜田淳子主演の映画であるが監督曰く 「(製作の)藤井(浩明)さんから、“『坊ちゃん』の映画をやる事になった” という話があったが中止になり(77年の松竹映画『坊ちゃん』と何か関係 があるのでしょうか?)、その代わりにこの映画の話が来た。」 『淳ちゃん(桜田淳子)は芝居が出来ないので、その代わり脇を芝居の 出来る人で固める事になった』 との話。製作サイド(サン・ミュージック)としても、桜田淳子の今までとは 違う魅力を出したい、とアイドル映画にしては大人な内容のサスペンス 映画の製作にGOサインを出したのである。 しかしいざ撮影に入ると桜田淳子は頑張り屋さん。 『テンションが上がり過ぎると、目が違う方向に行ってしまうので、むしろ リラックスするように指導した』 との話。現場では怖かったとの証言が多い(特に女優さん、『ポーラーボーラ』 の関谷ますみさんからも)と、トークショーの司会の方につっこまれた監督。 『別に、おっかなくは無いんだけど・・・若かったからかな?』 そう指摘される監督の技か、実際映画での桜田淳子は熱演です。また バレエ姿にセーラー服、さらにアダルトな衣装にパジャマ姿と、様々な コスチュームだけでは無く、殺されかけたりシャワーシーンは有る(無論肝心 部分は見せない)、あげくの果てにレイプ未遂なシーンまで有り(あくまで 未遂ですから・・・)と、見せ場テンコ盛り。 しかし脇を芝居が出来る人で固めた結果、その役者さんらが楽しんで 暴走しているのがこの作品のもう一つの魅力。これが監督の意図でも あり、役者さんらも互いに競い合うように演じています。 物語は自殺とされた姉の死の謎を追う桜田淳子が、様々な経験を積み ながら事件の真相にたどり着くまでを描いている。個人情報保護法の ない時代とはいえ、素人探偵にここまでできるかぁ?という基本的な 疑問は置いといて、少女マンガ的なサスペンスとして完成しています。 そしてこの事件の容疑者として登場する役者さん達が、上記の理由で 面白過ぎ。他にも「桜田淳子にレズで迫る泉ピン子」という強烈な存在も ありますが(笑)、何と言っても登場する5人の容疑者が凄い。 淳子に疑われる5人の中で、比較的マトモなのは篠田三郎、中村敦夫、 地井武男。この3人・・・比較的マトモな役を演じる事が多い3人にも、 淳子に対して実にエモーショナルに迫る見せ場が用意されている。 そして残る2人に至っては・・・まず田中邦衛。キ●ガイの役です(笑)。 アンタ、なんでこんな所にいるの?この「舞台」、どうやって用意したの? ・・・って場所で咆えている姿は必見!オチは精●病院の救急車に乗せ られてしまう。邦衛・そして監督、あまりにもノリノリです。 そしてもう一人は大本命、岸田森。「喘息持ちでフェチで、オネエ言葉で 連続絞殺犯(?)な美容師」という、如何にもご本人が好きそうな役を、 実に喜々として演じています。岸田森は常々「ワンシーンで、映画を変えて しまうような役者になりたい」と言っておられたそうですが、この映画にも そんなシーンが用意されています。岸田森は主演するより、特撮番組や ジャンル映画の中で自分のパートを、楽しみながら自分の流儀で演じる事が 本当に好きなんだなぁ。 こういった役者さんの暴走ぶりを監督に尋ねると、 『(脇を芸達者な人で固める方向が認められた事もあり)僕と役者さんも 自由にやらせてもらった。』 『役者さんものって、お互いに競い合うような部分もあったと思う』 と答えてくれました。 という見所タップリの映画なのですが・・・この映画製作時は製作サイド から「演技ができない」とされた桜田淳子ですが、この映画での経験含め 映画・ドラマ、それと・・・『8時だよ!全員集合』のコントで(?)経験を 積み、役者としても成長して行くが・・・「目が違う方向にいってしまった」 のか、宗教方面に行ってしまいました。 という事情からか、この映画も上映される機会の少ない作品。もし見る 機会があれば・・・特に岸田森のファンには必見!とお勧めします。 また大林宣彦監督が本人役で出演、その隣にいるのが名脚本家の 白坂依志夫といった遊びもある作品でもあります。監督は『身近な友人に 声をかけ、楽しんで撮らせもらった作品』とトークで語ってくれました。 でもこの映画、宗教方面の問題をクリアしても・・・田中邦衛の場面が 問題になるような気も(笑)。ともかく埋もれさせるには惜しい作品です。 70年代映画度 ★★ 桜田淳子度 ★★★ 田中邦衛暴走度 ★★★★ 岸田森お愉しみ度 ★★★★★ 1978年 東宝(東京映画) 監督 小谷承靖 脚本 白坂依志夫・安本莞二 製作 藤井浩明 出演 桜田淳子 夏純子 篠田三郎 中村敦夫 田中邦衛 地井武男 岸田森 泉ピン子 岸部シロー 2009年5月16日 新宿テアトル特集ANにて鑑賞
(併映 『極底探検船ポーラーボーラ』『愛は嵐の中で』) l
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