まずは素朴な疑問を解決しましょう。何故「キングコング」を東宝や東映動画、 ランキン=バス プロダクション(以下R&B)が手がけているのでしょう? ここでは「キングコング」が日本で映画、アニメに登場した歴史を紹介します。 えっ、『月光仮面』に出たマンモスコング?さらに昔の松竹版、斉藤寅次郎 が手がけた『和製キングコング』もある?たかが良く似た巨猿の怪獣、あまり 深く追求してはいけません… オリジナルは1933年の米・RKO映画の作品。特撮をウイリス・H・オブライエン が手がけ、「アメリカ映画の怪獣はコマ撮り」の原点となった、モンスター映画 の歴史的作品。ピーター・ジャクソンのリメイク版『キングコング』のオープニング タイトルは、オリジナル版そのままに作られています。この他にもRKOは「歪な」 がRKOにオマージュを捧げられまくっています(笑)。 ところがこのRKOは第二次大戦中~戦後期に経営が悪化、そこで大金持ちに 更に会社を引っかき回されたあげく、1957年に倒産し映画製作会社としての 歴史を閉じる事になります。またその際、過去に製作した作品の権利はあちら こちらに売却されています。 この頃、一つの映画の企画がありました。「キングコング対ガンガルチュア」、 このガンガルチュアとはフランケンシュタイン博士の創造したモンスターの 事であり、「キングコング対フランケンシュタイン」のタイトルでして紹介される事 もあります。企画の産みの親は「キングコング」の製作後、残念ながら仕事に 恵まれなかったウイリス・H・オブライエン。1961年にこの企画を混迷するRKOに 持ち込むが、その後ジョン・ペックなるプロデューサーの手に渡る。 この企画はここで「キングコング対プロメテウス(同じくフランケンシュタイン博士の 創造した怪物の名)」と名を変え、これをジョン・ペックは1962年、日本の映画 会社に売り込んだ。その相手先が東宝であった。こうして東宝はキングコングと フランケンシュタイン(の怪物)の、5年間の使用権を得る事になる。そして同年 完成したのがあの『キングコング対ゴジラ』、1962年8月の公開となります。 なお、自分の企画が思わぬ形で転売され、日本で映画化された事を知った (しかもコングはコマ撮りでなく着ぐるみ…)ウイリス・H・オブライエンは、失意の 内に同年11月に死去する。あの娯楽作『キングコング対ゴジラ』の背景に、斯くも 哀しいドラマがあったとは…。 このように書くとジョン・ペックという人物は、絵に描いたような極悪プロデューサー に思われますが、彼の製作した映画の一本にジェームズ・スチュワート主演の 映画化ですが、この作品、というよりこのシチュエーションは現在も愛され、映画 などで今も使用されていますが、それに一役買ったのもこのジョン・ベックという 人物であったと付け加えておきます。 さて、ここでようやR&Bが登場してきます。R&Bはアーサー・ランキン・Jrと ジュール・バスの両氏が創立したプロダクションで、1950年代後半よりTV向けに 人形アニメーション作品を制作している実績がありました。このR&Bに対して、 キングコングの映画化権を持つRKOジェネラル、同じくテレビ化権を所有している ABCテレビが、キングコング作品の製作を依頼する事から物語は始まります。 R&Bは実写映画の企画を東宝に、TVアニメの企画を東映動画に持ち込む事と なりました。まずTVアニメについてR&Bは、自社の関連会社ビデオクラフト・ インターナショナルを通じ、東映動画と合作契約を成立させました。こうして 生まれた作品が1966年のテレビアニメ作品『キングコング』。なおTV放送の際に『1/007 親指トム』というアニメ作品と共に放送されています。R&Bと東映動画 との関係はまた別の物語があるのですが、この件は改めて紹介させて頂きます。 一方東宝では『キングコング対ゴジラ』の後、キングコングが再度映画に登場する 機会に恵まれませんでしたが、コングと同時に使用権を手に入れたキャラクターは スクリーンに登場しています。 された訳です。この2作品は東宝と海外プロダクション、ベネディクト・プロとの 合作映画。米のマーケットを狙って製作され、米での劇場公開はあのAIP(B級 映画の宝庫の会社であり、かのロジャー・コーマン御大の活動拠点!)でした。 話がまた脱線しますが、ベネディクト・プロは当時米でゴジラの権利を得ていた ヘンリー・G・サバースタインが設立した会社。このヘンリー・G・サバースタインと いう方も面白い人物で、東宝の怪獣映画に関わるだけでなく、『国際秘密警察』 シリーズをアメリカで公開する際には、「再編集したら面白くなるだろうよ!」と 発案。こうしてウッディ・アレンが再編集した上にオリジナルのセリフまで付けて しまった伝説の珍作、『What's Up, Tiger Lily?』を誕生させた人物なのです。 ★ちょっと一休み、これが『What's Up, Tiger Lily?』の一部映像です。 ウッディ・アレンはこれが監督デビューと扱われるのは不本意なのか、 この仕事について多くを語りたくない模様・・・。 他にヘンリー・G・サバースタインの手がけた作品には三船敏郎、リー・マービンが されたアニメを見たら、放送禁止用語連発で音声ブツ切り状態だった事を記憶 しています。理由?察して下さい…)のアニメ・映画にも関わっており、また映画 以外の仕事ではエルビス・プレスリーの代理人を務めていたりする人物。この 方も実に興味深い存在。 話を元に戻します。アーサー・ランキン・Jrから改めて東宝に持ち込まれた「キング コング」の企画は、R&Bで用意された設定…オリジナルのコングとは異なり、 人間の味方として活躍するコング…が生かされる事になります。結果として既に 東映動画で製作されていた、アニメ版『キングコング』と直接のつながりこそ無い ものの、共通した設定や世界観を持つ作品…例えばコングが世界を股にかけて 活躍する事や、悪役であるDr,フーやメカニコングのキャラクターは両作品共に 存在しており、正に双子のような関係となっています。 映画となりました。恥ずかしながら長らく私は、この映画は5年間契約の東宝 でのキングコングの使用権が切れる為、急遽作られた作品であるとしか認識して いませんでした。映画が日本人キャストでありながら無国籍であった世界観も、 企画段階からR&Bと共に、アメリカのマーケットを意識して作った結果だったの ですね。個人的に他の東宝怪獣映画作品には無い、垢抜けた感覚が大好きな 作品ですが、これも合作ならではの魅力、と改めて認識させられました。 アーサー・ランキン・Jrは、主にプロデューサーとして活躍される人物ですが、 プロデューサーにも色々なタイプがあるのはご存知でしょう。金儲けにしか興味が ないとか、ハッタリ屋とか、スタッフを悩ませる口出し屋とか、美女を侍らせクスリ を…なんてステレオタイプなイメージが有名。偏見とはいえモデルとなるべき人物 がいた結果、なんですけどね。 が、アーサー・ランキン・Jrのプロデューサーとしてのスタイルは、自身で企画・ 立案、場合によっては自らが脚本を書き監督も務めるという、製作スタッフに近い ポジションで仕事をするタイプ。自分の作りたい作品を、如何に具体化するかに 手腕を振るう人物で、企画段階から製作スタッフと交流、現場や技術を具体的に 知る者として製作側に的確に注文を付けるタイプの人物です(これって結構 スタッフ泣かせでもある?)。この姿勢が彼の手掛けた作品の背景にある事を 覚えて頂いた上で、以降紹介する彼の仕事と作品に注目して下さい。 (続く) |